順調な妊娠生活。臨月に入ってから発せられた「頭が大きいかも…」という産科医の言葉への不安。緊急帝王切開、誕生直後の衝撃、泣かない赤ちゃん、抱っこができないつらさ、連日の病院通い、原因不明という不安、眠れぬ夜……。

出産当日

息子は妊娠41週と0日で生まれてきました。破水から陣痛がおこらず帝王切開での出産でした。妊娠中はいたって順調。自然分娩で生むことしか頭になかった妻は、帝王切開になったということだけで相当なショックを受けていました。

手術自体はあっという間でした。女の子だと言われていましたが、生まれてきたのはカワイイ男の子でした。

ところが先生の顔に笑顔はありませんでした。
想像していた「おぎゃーおぎゃー」もなく、看護師さんの手で何か施されているうちに泣き声をあげてくれました。

・胎盤が300g程度と小さく、さい帯が21cmと短かった。
・カラダと比較して頭が大きい(37cm)。
・活気がない
・呼吸が弱い
・上あごが大きい
・下あごが小さい
以上のようなことを告げられました。

保育器に入れられて一晩過ごしました。

出産翌日

会社にいた私に妻からの電話。沈んだ声でした。

「赤ちゃん、救急車で連れて行かれちゃった………」

血の気が引きました。術後の妻は身動きがとれません。仕事を切り上げ、すぐに転院先の病院に駆けつけました。
抱き上げることもかなわぬまま赤ちゃんと引き離された母親の気持ちは、父親の私ではとても言いあらわせないものだったでしょう。

はじめてのNICU

息子は転院先のNICUに入りました。
NICUという名前も存在も知らなかった私。何度も手を洗い、消毒し、服を着替えて入らなければならない場所…あらためて息子にただならぬ事が起こっているのだと危機感を覚えました。

はじめて入るその場所には、たくさんの赤ちゃんが並んでいました。部屋のあちこちでピーピーと音が鳴っていました。

息子は保育器の中で眠っていました。私はケース越しに、ぼんやりと我が子の顔を眺めることしかできませんでした。

診断

私がいる間に、何人かの先生が息子を診に来ました。
ざっと赤ちゃんのカラダを見た結果、下顎(下あご)が後退し舌が短いため、呼吸がしにくい状態とのこと。呼吸を確保することが最優先だと言われました。それに加えて、股関節脱臼、停留睾丸が認められる(だから生まれるまで女の子だといわれていた?)との診断でした。順に検査をしながら経過観察をしていくということでした。

ピエール・ロバン症候群

お世話になった病院では週に一度、主治医からの説明が受けられる仕組みになっていました。2回目の説明で「ピエール・ロバン症候群」という診断名がつきました。それまで毎晩毎晩、インターネットで息子の症状について調べていく中で、「ピエール・ロバン症候群」ではないか…と考えていたからか、特別な衝撃はなく不思議なくらい冷静に聞くことができました。最も危険な局面であるという出産直後の呼吸確保はできていた(と思う)ので、インターネットで見た「予後は比較的良好」という情報を信じて、「大丈夫」だと言い聞かせていたのかもしれません。

私なりの「ピエール・ロバン症候群」の解釈
1)下顎が小さく、そのため舌が奥の方にある
→成長とともに上顎に追いつく
2)出産直後の呼吸(気道)確保が重要
→病院で適切な処置をしてもらえば大丈夫
3)口蓋裂を伴うことも多い
→手術で治る
4)言葉をはなすようになったら訓練が必要
→不要かもしれないし訓練すれば大丈夫
5)原因は探ったところでわからない
→ひとしきり嘆いたら後は対策を考えた方がよい
6)哺乳の問題で成長が遅くなる
→ゆっくり見守ればいずれ追いつくはず
※あくまでも素人の、しかも都合のいい解釈です。
必ず主治医の指示に従ってください。

以降の育児と成長の過程は日記にて紹介しています。
ブログ「ワタシナリニ、ボクナリニ」→

親としての思い

初めての子、しかもよく分からない障害を持っている……最初は戸惑い、うろたえ、「なぜ?どうして?何が悪かったのか?」「将来はどうなるのか?障害が残るのでは?」と嘆く日々でした。しかしいくら考えても原因は分かりません。将来のことも経過を見ながら対応していくしかありません。

私たちは分からない原因を探ったり、見えない遠い将来に不安を抱いたりしても仕方がないことに気がつきました。そしてそれは自らを苦しめるだけであることを知りました。今、我が子のためにできること、この先やるべきことを考えて実行する。そう心に決めてから気持ちが楽になりました。

もちろん、ふと悲しくなったり涙があふれてくることもあります。そんなときは泣けばいい。でも、ひとしきり泣いたら気持ちを切り替える。それができるようになりました。そう考えられるようになったのも息子が一生懸命に生きてくれているから。がんばって呼吸をしてくれているから。不器用でゆっくりだけど一生懸命お乳を飲んでくれるから。ゆっくりだけど少しずつ成長してくれているからなのです。

これからもっきっといろんな壁にぶつかるでしょう。でも「覚悟と期待」を両方もてるようになった今なら乗り越えられます。同じようなお子さんをお持ちの方、一緒にがんばっていきましょう!

その後…プラダー・ウィリー症候群と診断される

呼吸も安定し、自宅にリースしていたパルスオキシメーカーも解約。少しずつではあるけれども体重も増えはじめて落ち着いてきた6カ月の頃。新たに通い始めた2つ目の病院(ひとつめより大きな大学病院)で「プラダー・ウィリー症候群」を疑われました。検査の結果はクロ……。またしても大きなショックを受けることになりました…。

プラダー・ウィリー症候群→